エリート弁護士は独占愛を刻み込む
呆れ顔で言うと、彼は戦法を変えてきた。
「今日はこれからクライアントとランチなんだけど、それすっぽかして買いに行っていいの?」
芝居がかった口調で言って、私の反応をうかがうように上目遣いに見る。
何が大事かなんて自分でもわかってるのに、私に聞かないで欲しい。
「駄目に決まってるでしょう!」
苛立たしげに答えると、彼はにっこり笑いながら「うん、うん」と頷いた。
「だよね。だったら、どうしたらいいと思う?俺が裁判に勝つにはあのチョコが必要。でも、俺は買いに行けない」
まるで環境問題でも語るかのように真剣に話しているが、話題はチョコ。まともに相手をする気にもなれない。
「では、正一さんに頼めばいいでしょう?私がいなかった時はずっと正一さんが買いに行ってたんですよね?」
私は前の席にいる正一さんにチラリと目を向けた。
彼は佐藤正一と言って、恭吾さんと同じ年なのだけど、司法試験に何度トライしても合格せず、パラリーガルとして恭吾さんの下で働いている。
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