エリート弁護士は独占愛を刻み込む
だが、我に返ったところで彼女の窮状は変わらない。
『ここだよ。君が他に引っ越すあてがあれば別だけど。そもそも引っ越しの資金とかあるの?』
突っ込んで聞くと、彼女は気まずそうに小声で答えた。
『……ありません』
『だったらどうするつもり?ご両親とか頼るの?』
少し厳しい口調で問えば、彼女は悔しそうにギュッと唇を噛んだ。
『……誰も頼れません』
どうやら自分の親も頼れないらしい。
ただ解雇されたわけではなさそうだ。
『うちには余っている部屋があるし、家事をやってくれるならタダで住んでもらって構わない。それに、さっきも言ったけど仕事も紹介しよう』
『仕事って……なんの仕事ですか?夜のお仕事とかではないですよね?』
不安そうに聞く彼女に、スマホを操作してうちの法律事務所のホームページを見せた。
『俺は黒瀬恭吾。弁護士をしている。君には俺の秘書をやってもらいたい』
< 52 / 274 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop