エリート弁護士は独占愛を刻み込む
細身でメガネと一見頼りなさそうに見える。でも、コツコツとひた向きに仕事をするのが正一さんの長所で、彼は恭吾さんのよき右腕だ。
「葵ちゃん、今は駄目です。特許の使用例調べるので手一杯」
正一さんは少し青ざめた顔でブンブン首を左右に振った。
その返答を聞いて、強引にこの話を終わらせる。
「だそうです。恭吾さん、諦めてくださいね」
恭吾さんの財布を置いたまま席を立とうとしたら、ドアからひょっこり宗一郎さんが顔を出した。
白い髭をたくわえた水戸黄門のような容姿のこのおじいちゃん……いや、おじさんは、宝生宗一郎といってこの宝生法律事務所の代表で私の大ボス。
上司、部下関係なく名前で呼び合うのはこの代表の方針。
どこにでもいる気の良さそうなおじさんに見えるけど、この法律事務所を開く前までは最高裁判所の長官をしていた凄いお方なのだ。
< 6 / 274 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop