エリート弁護士は独占愛を刻み込む
「葵に居場所を作ってあげたかったんだ。彼女、前の会社を急に辞めさせられて、行き場を失っていてね」
「だからってどうして恭ちゃんが引き取ったの?彼女のことを頼める人間なんていっぱいいるでしょう?」
晶の質問にグラスの中を氷をじっと見つめながら答える。
「自殺して亡くなったクライアントのお嬢さんに似てたんだ」
俺の返答に晶と涼太は「ああ」と静かに頷く。
「お前、まだ引きずってんの?」
涼太に聞かれ、俺は後悔の念に駆られながら言った。
「自分の目の前で女の子がマンションの屋上から飛び降りるところを見たんだ。一生忘れないよ」
当時の俺は怖いものなんてないって思ってた。
八年前、電車内での痴漢事件の加害者の弁護士として俺は呼ばれた。
加害者の男性は五十代の建設会社の部長。
被害者は中学三年生の女の子。
その男性の話では車内で痴漢行為は行っていないらしい。
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