エリート弁護士は独占愛を刻み込む
恭吾さんはにこやかに微笑みながら私に注意した。
「ついて行きません!」
ムッとしながら言い返し、自分のバッグを持ってオフィスを出ると、エレベーターの前で深紅のスーツを着た美人に出くわした。
「ふふっ。葵ちゃんが来てから恭ちゃんのオフィスは賑やかね」
今日も色気ムンムンで綺麗。
見惚れながらもペコリと頭を下げる。
「あっ、煩かったですよね。ごめんなさい、晶さん。つい上司にムカついちゃって」
晶さん……藤原晶さんは恭吾さんの同級生で、うちの弁護士のひとり。
美人で女の格好をしているけど実は男性で、女装は趣味らしい。
人権問題や離婚訴訟が彼の専門分野で、女性のクライアントに受けがいい。
彼のオフィスは私達のオフィスの隣にある。
「元気があるのはいいことよ。うちに来た時は今にも死にそうな顔してたものね、葵ちゃん」
晶さんの指摘に私はただ笑って誤魔化す。
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