エリート弁護士は独占愛を刻み込む

被害者の女の子はクライアントのお嬢さんの父親が痴漢事件の加害者であることに気づき、クラスメイトにそのことを吹聴し虐めに発展。
そして、クリスマス前にクライアントのお嬢さんは自殺した。
それは、俺に直接は関係のない事件。
だが、もっと周囲の状況を考えて慎重にことを進めていたら、起きなかったかもしれない。
時間を巻き戻せたら……と何度願っただろう。
「私が恭ちゃんでもあのケースだったら示談を勧めてたわ。恭ちゃんのせいじゃないわよ」
晶は真剣な顔で慰めるが、俺の心は軽くならない。
「結果的にあの子は死んだ。もう戻ってこない」
俺はグラスに残っていたウィスキーを一気飲みする。
「で、罪滅ぼしに葵ちゃんを拾ったってことか。だが、彼女は亡くなった女の子ではないんだぞ」
涼太は眠っている葵にチラリと目を向けると、俺に視線を戻した。
「わかってる。でも、初めて葵を見た時、今にも消えてしまいそうな顔をしてたんだ。今度こそ自分の手で救ってやりたかったんだよ」