歌舞伎町ボーイズ
「あんたの顔なんか、二度と見たくない」


 と言われ、家を追われたのだ。


 別に俺も家に居たくなかった。


 オヤジなどともいつも口論になり、面白くなかったのである。


 俺が家を出て行った翌年、母親は急性の脳梗塞で亡くなった。


 別に葬式など行かなかった。


 縁が切れていたからである。


 それにあの人も不幸だったな、と後から思う程度で。


 結局、人間には全ての幸せや幸福が舞い込んでくるわけじゃない。


 必ず帳尻が合うのだ。


 それが痛いほど分かっていた。


 だから、実家には近付かない。


 それに俺自身、家族の呪縛などから逃れられて、よかったのだ。
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