指輪の魔法がとけた時
「棚橋課長」

私を腕の中に閉じ込めて慎は鋭い視線を亮二に向ける。

「二度とあすかに近づくな。
常務の娘と結婚するんだろ。

そのまま出世していけばいい。

あすかはもう俺の恋人でもうじき俺たちは結婚する。

あんたたちが付き合っていた事実を公表するつもりはないから、黙って婚約者だけ大事にしろ。
常務を裏切ると遊びでもただじゃすまないからな」

「はっ、余計なお世話だ。
俺のお古でよけりゃくれてやるさ。

そんなつまんない女頼まれたって二度と近づかないよ」

慎が私を腕から離すと亮二の胸ぐらをつかんだ。

「お前!もう一度言ってみろ!
あすかを侮辱するのだけは許さない!」

睨みあう二人に私は胸ぐらを掴む慎の手に触れ

「やめて慎。もういいから。
行こう。さようなら、亮二。

真理恵さんとお幸せに」

精一杯の笑顔を向けると、慎は私の肩を抱きそのまま一緒に歩き出した。

頬を伝う涙を慎は自分のスーツに顔を押し付けて涙を吸わせて、

「頑張ったなあすか」

と耳もとで囁き、私の頭を優しく撫でた。
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