指輪の魔法がとけた時
「慎っ!」
真っ赤な顔で睨み付けたが、思わず口にしてしまった呼び方が、私たちの仲を強調してしまいますますみんなから冷やかされた。

「ふっ、やっちまったな」
といたずらに成功したことを喜ぶ子供みたいな無邪気な笑顔を浮かべる慎に、少なからず私は引かれはじめている。

『必ず俺の嫁にするからな』

そう私に宣言した通り、慎の思うがままにことが進み始め、私はこの強引で甘く俺様な渡瀬慎太郎のペースにすっかりのせられている。

「前よりずっと幸せそうな顔してる。よかったな、長谷川」

こそりと田仲に囁かれ、

「ありがとう」

と答えた私の心はほんのり温かい。

新しい恋を始めよう。

私はそっと左手の指輪を無意識に撫でていた。
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