指輪の魔法がとけた時
「どうして…」

みるみる私の目から涙が溢れ出す。

言い訳をするわけでもなく、取り繕うわけでもなく、私の存在を無視した彼は、彼女に私のことを知られたくなかったのだろう。

「ふっ…やだな…馬鹿だな私…。

こなきゃよかった…」

再び駅の改札をくぐり、電車に乗ったが、帰る先は私たちのマンションしかない。

帰りたくはなかった。

それでも今の私が帰る場所はそこしかないのだ。

今朝何度もキスを交わして、慎を送り出したことが夢のようだ。
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