指輪の魔法がとけた時
どれくらいそのまま泣いていたのだろう。

化粧をしたままの顔はどろどろで、結婚式の為にまとめていた髪は崩れてぐちゃぐちゃで、フォーマルのワンピースもシワだらけで涙と化粧でシミになっていた。

「ひどいな…」

とりあえず着替えようとのろのろ立ち上がった時、カチリと鍵があく音が聞こえ、がチャリとドアが開く音がした。

「誰?」

そう呟いたが、この家に入れる人なんて一人しかいないのだ。

茫然と入り口を見つめたまま立ち尽くしている私を、朝と同じスーツに身を包んで現れた慎は、私の姿を見るなり、同じように茫然として動きを止めた。

「あすか…」

苦しげに絞り出すような声に弾かれて、私の両目からはまた瞬く間に涙が溢れ出した。
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