指輪の魔法がとけた時
「心配で帰ってきた」

ぎゅっと力強く抱き締められて、私はその腕から逃れようともがいて胸を叩く。

「あばれるな!
落ち着けあすか。大丈夫だ、俺がそはにいるから。
大丈夫だ、泣くなよ」

更に抱き締める腕に力が込められ、私はその腕から逃れることを諦めた。

泣くしかなかった。

止まらない涙にいつのまにか私はしゃくりあげながら声を出して泣いていた。

「あすか」

何度も私の名を呼ぶ声が苦しくて仕方がない。

泣きすぎて何も考えたくなくて、私はそのまま泣きながら泣きつかれて眠りについた。

温かな腕に包まれて、その温かさがとても残酷で…感じる体温とは裏腹に、私の心は冷たく凍えていった。
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