指輪の魔法がとけた時
「何かあったのか…?」

「…離して…」

絞り出した小さな声は慎の耳に届いたようで、一瞬動きを止めたが、すぐに私を組敷き、両手は動けないように押さえられて、私に覆い被さりその目は切なそうでもあり怒りに満ちてもいた。

「離さない。
あすかは俺のものだ。
いったい何があった?

俺を拒絶するようなこと何か言われたか?

……指輪…はずしたのか?」

押さえられた手に指輪がないことに気がついた慎は、私の左手をとり、薬指に口づけた。

「ごめんな。
あんな指輪の渡しかたはなかったよな。
プロポーズだって酷いもんだ。

一生に一度のこともっときちんとしないと悲しくなるよな」

慎が何を言っているのかわからなかった。

綺麗な女性と一緒にいたことを私に言い訳するわけでもなく、私が見たことはまるで夢なんだ、慎と結婚するのは私なのだと言い聞かせるように話している。
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