指輪の魔法がとけた時
焦った様子でイライラしながらコール音に慎が気をとられている間に、下着姿の私は急いでパンツにトレーナーを身に付けた。

一気に捲し立てるように胸に使えていた思いを吐き出したが、まだ慎から何一つそのことに対する答えは聞いてはいない。

ただ、もうなにも知らなかった以前のままの私でいることは難しい。
このまま彼と結婚するわけにはいかないだろう。
この家から出ていくことを決め、慎が横浜にまたすぐに仕事で戻るまでとりあえず出ていこうと財布と携帯を鞄に押し込み足早に玄関に向かった。

私の行動を横目で確認していた慎は、長く鳴らした電話の相手がようやく応じて

「おい!早くでろよ!」

と怒鳴りながら急いで衣服を身に付けていた。

私の行動が一歩早く、

「待て!あすか!」

背後からの呼び声を無視して家を飛び出した。
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