指輪の魔法がとけた時
「大丈夫か、あすか!」

息を弾ませて、携帯を握りしめたまま走り寄ってきた慎を見上げ

「大丈夫…じゃない…。

救急車呼んでっ!

たぶん…折っちゃったみたい…」

遠くに転がったハンプスを拾い上げた慎は、私の元にかがみ左足に目をむけた。

「はぁ、俺から逃げるには痛い代償だな。
しばらくは入院になるだろうから、俺と顔を付き合わせなくはなるが、俺のもとから勝手には居なくなれないからな。」

フンと鼻を鳴らして救急車を呼ぶ電話をかける慎を、痛さで顔を歪め涙目で睨みながらこの男からどうやって逃げようか考えていた。

『あすか、お前と渡瀬が結婚する理由はお前を隠れ蓑にしてこのまま浮気を続けるためだよ』

信じまいとしていた亮二の言葉が頭に浮かぶ。

「とりあえず病院でじっとしていてくれ。
出張が終わったらゆっくり話をしよう?

あすかも少し冷静になってくれ。

俺が好きで結婚したいのはお前なんだ。

明日葉は関係ない。

俺を信じきれないあすかにお仕置きだ。

少しモヤモヤすればいい。

詳しい話は横浜から戻ってからだ」

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