お隣のイケメン先輩に、365日溺愛されています。
「ねー、杞羽こっち向いて」
「や……です」
「なんで」
「またキスするから……っ」
振り向いた瞬間にしそうだもん。
今はそれよりわたしは怒ってるのに。
わたしは機嫌が悪くて怒っても、結局先輩の甘いキスとかにうやむやにされちゃうから。
今日はちょこっと抵抗してみる。
いつだってわたしが言うこと聞くなんて大間違いなんだから。
「……んじゃ、しない」
拗ねた声。
たぶん暁生先輩が今度は怒ってる。
ご機嫌斜めなのが声だけでわかる。
ほんとにほんとに、わかりやすい人。
さっきまで後ろから包まれていた温もりから、あっさり解放されてちょっとさびしくなった。
控えめに後ろを向いてみたら、見えるのは暁生先輩の大きな背中だけ。
これでいいのに。
たまには、わたしが反抗してみたっていいじゃんって思うのに。
突き放されるとなんでか心がさびしくなっちゃう。