君が遺した最後の手紙は

「お母さん、今日は遅番だっけ?」

「そうそう。保育士大変だよね」

「だね、お給料も安いし。」

お父さんは私が生まれた頃にはもう居なかった。痴情のもつれというやつだろう。明確に何があったかということは教えて貰ってないけれどお母さんが「人間同士簡単に決裂しちゃうんだからね」とよく言うことから裏切られたのだろうと推測している。

「お父さんが居ない」
そのことを嫌だと思ったことはほとんどない。不便だと思ったことはあるけれど、お母さんが必死に働いてくれていることを知っているからお母さんだけでも大丈夫なのだ。

「美結のクラスってどんな感じ?2年2組は結構キャラ強いひとが集まっててさ、グループとか面倒なんだよね」

「うーん、うちのクラスは似たもの同士がまとまってる感じかな。だから平和」

「いいな〜、1年の時に戻りたいよ〜1年3組最高だったのに」

「青春はかえってこないよ」

「わかってるよ〜!しかも來(らい)ともクラス離れたんだよ!青春を楽しみたくてもその準備が整ってない!」

來こと太田 來鹿とは、お姉ちゃんの彼氏さん。同級生に結構人気があるらしくて、しかもお姉ちゃんは告白を受けた側らしいからお姉ちゃんもやっぱりモテるのだろう。

ご飯を食べつつお姉ちゃんの全体図を見てみる。

容姿端麗で姿勢がピンと伸びていて、箸の持ち方も正しいし、一般的な「かわいい」とか「美人」の部類で人気がある訳ではなく、そういう小さな細々したところがお姉ちゃんの良さなのだろう。

実際、來鹿先輩に馴れ初めを聞いてみたら姿勢の良さに凛とした雰囲気に惹かれたらしい。

「來鹿先輩なら大丈夫だよ。お姉ちゃんにちゃんと青春させてくれるって。」

「來のことやけに褒めるじゃん〜來の良さが分かった〜?」

「ハイハイ、分かりましたよ」

そう。お姉ちゃんもこの彼氏さんにベタ惚れなのである。

「來はかっこよくてやさしくて笑窪が可愛い。それから…」とかいつも彼氏自慢。本当にその通りだと思うけどね。

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