君が遺した最後の手紙は

翌日、学校に行くとすぐに林田くんの姿を見つける。机にもたれかかって眠たそうにしてる。

聞かなくちゃ、「理由」。
聞かないことには納得出来ないし押し付けられるみたいで、なんかヤダ。

「あの…林田く」

「おーい!希翔おはよ!」

話しかけようとしたのに遮られる。林田くんと話しているのは日野くん。林田くんは鬱陶しそうにしてるのに毎日話しかけてる強心臓な人。

「うん」

「なあ聞いてよ、昨日母さんとテレビ見てたらさぁ…」

話し始めてしまった。日野くんから一方的にみたいだけど。今は日野くんも居るし聞きづらいな。また機会を狙うしかなさそうだ。


だけど。

休み時間の度に日野くんが居るものだからなかなか話せない。


「っ…林田くん!」

結局話しかけることが出来るのは放課後になってしまった。機会を狙いすぎて月華から「なんか今日警戒心強くない?」ってツッこまれてしまったくらいだ。

「なに」

「実行委員やりたくないってさ、どうしてなの?」

あんまり話したこともないし少し緊張してしまう。

「うん…」

「ただやりたくないじゃ私も納得できないし差し支えなければ理由を教えて欲しいなぁと思いまして…」

ついつい弱気になってしまう。最後なんて敬語になっちゃったし。

「やりたくない…理由。」

「そう。理由。」

そういうとしばしどこかに思いを馳せるような表情をした後

「俺にとっては、無駄な時間だから。やりたくもないことやって時間潰したくない…」

普通なら「はぁ?みんな同じなんですけど」って思っちゃうほどの理由なんだけど、なぜだか、そういう気持ちにはなれなくて、この人も過去になにか抱えてるのかなとか思う。

「…でも思い出とか…」

「思い出なんてっ…要らない」

思いもよらず声を荒げられる。目を見開いてしまう。

「…ごめん。でも、本当に時間無駄にしたくなくて」

「うん…その気持ちもわかるし、なにか深い事情があるのかなとは思うけど、それは理由にはならない気がするよ。」

「うん…」

多分林田くんだってきっと分かってるんだろうな。そのうえで私だって言ってる。流石に1人で実行委員をするのは重すぎる。

「別に説得しようとしてる訳じゃなくて、なんというか、一緒にやってくれると助かるというか…」

説明がしどろもどろになる。

「一緒に委員をしたい?」

「…っそう!」

…ん?なんか語弊が生じてる気がするけど…ま、いっか。

「やりたくないこともやってみたら楽しくなるかもしれないよ」

苦し紛れの説得だけど、それでやる気になってくれれば…

林田くんの顔を見ると、思い切り目を見開いていてビビる。

「…?林田…くん?」

「…あ、ごめん……」

「…」

ほぼ初対面の二人の間に沈黙が走る。物凄く気まずい。なにか話さなきゃ。

「…明日」

「ん?」

「明日、実行委員会…どこで何時からか教えてくれる?」

林田くん…!!

「や、やってくれるの…!?」

「…うん」

なんだか照れてる。そうだよね、やらないって言い張ってたもんね。

「ありがとう!これからよろしくね」

柄にもなくはしゃいでしまった。恥ずかしい。

「明日の時間…」

「あ、そっか!」

確か…

「明日の4時20分に視聴覚室に集合!」

「ん、了解。」

「…っあ、あの…連絡先…教えて貰っても…」

「いいよ。電話番号教える。メッセージングの方もそれで追加出来る?」

「出来る!ありがとう!」

「番号言うけど」

「あ、まって携帯」

スマホは確か鞄の中に閉まっておいたはず。いつも入れてる場所に…

「あったあった。……お願いします!」

「ん。えっと…………。出来た?」

「出来た!…………だよね?」

「そ。帰ったらメッセ送っといて。」

「わかった!ありがとう!」

「うん。部活、いく?」

「うん!!行こう」


林田くんの連絡先…別に好きでもないくせになんで嬉しくなってるんだろう。恥ずかしい…

でも一緒にやってくれること自体は嬉しい。だって私の言ったことで林田くんの気が変わったってことでしょ?なんで説得出来ちゃったのかなぁ?

「林田くん、ありがとね」

彼はなにが?って表情をしていたけど、深くは言わず、そこで別れお互い部室に向かった。
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