君が遺した最後の手紙は
Episode3
話し合い
☪︎
「今から文化祭準備を始めます、まず最初に…」
私が進行、林田くんが板書兼記録を担うことになり、話しいの時間が始まった。
「今年のテーマは『未来』で1年生はそのテーマに沿って校内を装飾することになります。それで副題とかを決めたりどんな装飾にするかを決めたりします。2組の装飾する場所は南ピロティ、去年の写真の撮られてる場所です。なにか案ないですか?」
教室がざわめきだす。今日中になにか決まればいいけどな。
「ねぇスマホって使えるのかな?」
クラスで1番目立ってはっきりしている灘南(なだみ)さん
「あ、それな。スマホ使えるなら写真映えするようなの作っても楽しそう」
目立つ派グループの松谷さん。思ったより積極的。
意外と女子はノリノリだ、男子は…微妙?
「なんか見て楽しめる様なのとかどうかな…?」
おとなしい派の田代さんまで意見を出してくれてる。
「じゃあまずは写真映え、見て楽しめるものかな。林田くん板書お願い。」
黒板にカツカツと文字が記されていく。男子に書記を任せるのは不安だったけど林田くんの字は綺麗だ。バランスが整ってて見やすい。
「お金とかどうするの〜?」
「そこは1クラス5000円までって制限があるわよ〜」
八津先生のフォロー。八津先生は担任だけど取り敢えず頼りない先生。
「え〜、やっぱ南貧乏だなぁ」
日比野くんがむくれるように言う。クラスの空気が和む。
このクラスなら、何とかなるような気がしてきた。
「まぁなんとかそれでやるしかないんっしょ〜、どうせなら優勝してやろうぜ!」
学級委員にぴったりな性格の今井くんが2組を一気にやる気モードに引っ張ってくれる。
「おっしゃ!頑張ろうぜ!」
気だるそうな人もいるけどそこはフォローを入れて皆で一緒に成功出来るように頑張ろう。
「じゃあ取り敢えず各自アイディアを考えてみてください。取り敢えず…5分まで周りと話してもいいので何か案をお願いします」
ガタガタ椅子が動く音がする。
女子はグループとか関係なくひと塊に集まっている。吸い寄せられるように私もその輪の中に加わる。
「ねぇ美結ちゃんちょっと思いついたんだけど…」
「なになに〜」
「時計、モチーフにしたらどうかなって…時計って時間を示すものだし未来にも繋がるかなって思って」
凪乃歌(なのか)ちゃんが少し照れたように私に伝えてくれる。凪乃歌ちゃんは美術部兼写真部の大人しめな子。
「なるほど…時計か…ありかも。後で前で言ってみるね!」
時計、なるほど時計か。アンティークなものからシンプルなものまで持ち主の人柄が出るもの。
「陽の当たる場所だし有効活用したいよねぇ」
「時計だったらアリスとかどうかな?」
このメンバーで話し合ってたら5分なんていとも簡単に経ってしまう。
「それでは話し合いをやめてください、女子側から出た案として取り敢えずモチーフに「時計」男子側はどうですか?」
「特に…」
林田くんがボソリと呟く。女子より静かだったしうちのクラスの男子はなんだか冴えない人が多い気がする。日比野くんとかは元気なんだけどね。
「じゃあモチーフは時計のイメージで作っていってこの先案が増えたらそれも付け足しつつ完成させていきませんか?」
教室の雰囲気はそんな感じで固まりつつある。良かった。平穏に終わりそう。時間もちょうどいい頃合だ。
「それではこれで今日の話し合いを終わりにします。」
「じゃあ号令かけて〜次は掃除ね」
八津先生ののほほんとした声が入る。とりあえず少しでも決まってよかったな、これからどうなるかはわかんないけど、みんなで頑張って行けたらいいな。