君が遺した最後の手紙は
体育館の扉は、随分重く作られている。多分ボールが当たっても壊れたりしないようにだろう。
お陰様で体育館の扉を開けるのには、結構苦労する。開けるのも閉めるのも力がいる。
その扉を開くと、様々な音がとびこんでくる。バドミントン部は、ステージ側でやっている。
「月華、行こう。」
バスケ部の練習を避けながらバド部の方への向かう。すると見たことのある後ろ姿を見つける。あれは多分理香子(リカコ)先輩。中学が同じでバド部だった先輩。
「あれ〜?美結ちゃん?」
後ろ姿を見つめていたら目が合い、話しかけられる。やっぱり理香子先輩だ。サラサラな黒髪と綺麗なスタイルはなんだかかっこいい。
「こんにちは〜、お久しぶりです」
「バド部入るのー?」
「まだ迷ってます」
曖昧に微笑む。
「そっか〜、入ってくれたら嬉しいな〜」
理香子先輩の目尻に数本の皺が入る。優しげな表情が更に柔らかくなる。
こんなに優しげなのに、試合になると意地の悪いところを突いてくるのだから信じられない。
「バド部は理香のおかげで強いんだよ〜」
「ちょっと先輩〜、先輩の方が強いじゃないですか」
「あはっ、まあね〜」
和やかな雰囲気で先輩後輩も仲良さそうだ。やっぱり惹かれる。
「あ、ちなみに部長の千尋(チヒロ)先輩だよ!」
理香子先輩の後ろにいるショートカットで猫目の先輩。めちゃくちゃ美人。
「樹 千尋(イツキ チヒロ)だよ!よろしくね〜」
「はい…!遠藤美結です!よろしくお願いします!」
「隣の子はー?」
「片瀬月華です!よろしくお願いします〜!」
「2人ともかわいい〜」
「経験者〜?」
ふと周りを見るとたくさんの先輩が集まってきている。可愛い先輩、美人な先輩、様々な人達が集合して、和気あいあいとした感じだ。
懐かしいと同時に苦しくなる。
…楽しかった思い出の中にはいつもあの子がいて、あのことを思い出してしまうから…。
囲まれて質問攻めにされ、当惑していると、
「ほら!2人とも困ってるじゃーん!練習はじめるよ!」
千尋先輩から先輩たちに声がかかる。
「美結ちゃんと月華ちゃんは体操服があったらトイレとかで着替えてきて〜、ないならステージの方で見学しててね!」
はーい、と返事をしたあと、2人で話して、体操服に着替えることに決めた。