My Happiness
慧莉をもう一度見る勇気もなく、私はそのまま家に帰った。

「ただいま………。」


返事はない。

どうせ、いつものことだ。

私の手前の部屋から喘ぎ声が聞こえる。


「あっ………あんっ……んああぁ!」


少し聞くだけでも不快。

私は自分の部屋に入り込んだ。

鞄を机の近くに放り投げ、ベッドに飛び乗りそのまま私は寝転がる。

けれど隣からは絶え間なく女の声が聞こえてくる。

「……あっ………きもち…いい………あぁっ!」


母さん以外の女が家で喘いでいる。

それは珍しいことではない。
母さんと離婚してから、父さんはいつもこう。


父さんなんて嫌い。

父さんは母さんを傷つけた。
父さんは母さんを捨てた。
散々、母さんを振り回して、結局は他の女を連れてきて母さんを追い出した。

父さんに着いて、来た女も嫌い。

私を邪魔者だと思ってるのは丸分かりだ。
まぁ別にそう思われても構わない。

でも父さんが仕事で居ない時、

「お金は渡すから何か食べてらっしゃい。あんな女が産んだ子のために、ご飯作るなんて面倒なの。」

母さんを“あんな女”と言う。

母さんを侮辱するのは許さない。

ムカつく、苛々する。


「母さん………。」

母さんが恋しい。

母さんと一緒に過ごしたい。


金持ちじゃなくて良いから、母さんと一緒に………。
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