My Happiness
生徒が帰った放課後の廊下は静かだった。

慧莉の足音だけが響き渡る。

―山本君は優しいんだけど………。

ふと立ち止まる。


―怖い。


何故かは分からない。
分かりたくない。

ただ心の奥にある何かを封じ込めた箱を叩かれる気分になる。

その箱を
開けたくない。
開けちゃいけない。

慧莉は静かな廊下をまた進み始める。

“俺が守るって約束したのにな……。”


深い眠りに入る前に聞こえた声。
寂しそうで悲しそうで胸が痛くなった。

顔に落ちた冷たい雫。


―山本君が分からない。
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