Dangerous boy

私は泣くのを堪えながら、一歩後ろへ下がった。

「早く行ってくれ。」

下を向いている部長が、なんだか泣いているような気がして、私は勢いよく頭を下げると、部長の車から走り去った。


そして、車が見えなくなったところで、私は立ち止まった。

私は一体、部長の事をどれだけ傷つければいいのだろう。

あんなに本気で、私に向かい合ってくれた人を、泣かす事しかできないなんて。


自然に涙が、出てきた。

こんな外で泣いていたら、変だと思われるから、声を出さないように、口を手で覆った。

ごめんなさい。

ごめんなさい。

心の中で、部長に何度も謝った。


誰かを好きになるって言う事は、誰かを傷つける事など、何かの本で読んだ。

偽善なんて、私の性には合わない。

それでも部長だけは、あんな風に傷つけたくはなかった。