Dangerous boy
「なに歩けない事を前提で、物を話している?」

小暮さんは思い余ったのか、尚太君を押しのけた。

「ほら、言えないじゃないか!」

「言えないんじゃない。まだそう言う事を考えるのは、早いって言ってるんだよ。」

興奮している尚太君と、冷静な小暮さんを見ていると、どちらにも近寄りがたい雰囲気があった。


「あんた結局、紗和子さんの事を、どうでもいいとしか思ってないんだよ。」

「なに?」

「だから、そんな冷静でいられるんだ!いいよ、分かったよ!紗和子さんは、俺が幸せにする!」

その言葉が、私の胸に突き刺さって、私は小暮さんと目が合った気がした。

「知ってるだろう!俺が紗和子さんの事を……」

「尚太!」

その時小暮さんが、初めて大きな声を出した。

「……心ちゃんが、いるんだぞ。」


そして尚太君も初めて、私の方を向いてくれた。

でも、もう遅かったのかもしれない。
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