Dangerous boy
仕事ができて、カッコ良くて、スマートに女性を口説ける人が、私を見つめてくれている。

「倉本?」

部長に呼びかけられ、ハッとする。

やばい、私今……


部長に、キスされると思った。

私、こんなにふしだらな女だったかな。


「確か、倉本の家この辺りだよな。」

私はタクシーの窓から、外を見た。

「そうです。」

「運転手さん、止めて下さい。」

高藤部長に言われると、タクシーの運転手さんは、少し走った場所で車を停めてくれた。

「あの、お金……」

「いいよ。俺が払うから。」

「そうは……」

私が振り向いた瞬間だった。

一瞬だけ、高藤部長の唇が、私の頬に触れる。

「じゃあ、これでチャラ。」

そしてまた上がる、私の胸の鼓動。


何回上がっても、物足りなく思うのは、なぜなんだろう。


「今日はいろいろと、有難うございました。とても楽しかったです。」

「こちらこそ。」
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