Dangerous boy
息を切らして、お店の前に行くと、階段の下で尚太君が待っていてくれた。

「尚太君!」

「心?」

私の姿を見た尚太君は、走って来てくれた。

「心!」

名前を呼んで、抱きしめてくれる。


ああ、不謹慎なくらいに、幸せを感じる。

「不安にさせたな。」

「……ううん。」

抱きしめてくれる、その腕の強さが、私の不安をどんどん溶かしていく。


その時お店の方から、オーナーの小暮さんの声がした。

「あっ、開店の時間だ。」

私は無意識に、尚太君から離れた。

「店、寄っていく?」

「どうしよう。」

こんな夕方の明るい時間から、飲んだ事もない。

けれどそう言って、このまま家に帰っても、自分の気持ちを持て余しそうだ。


「寄って行って。もう少し、心と一緒にいたい。」

尚太君の言葉に、うんと頷く。

私と尚太君は、階段を昇ると、彼はキッチンへ、私はカウンターの椅子に腰かけた。
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