完璧美女の欠けてるパーツ
捨てたい
「絶対!今年中に捨てます!」
森田梨乃は、隣のテーブルで盛り上がっている後輩の宣言を聞いて動揺し、同期が教えてくれた美味しいパスタ屋さんの名前が脳内から飛んで行ってしまった。
金曜の夜 10時
梨乃が所属する広報部で大きなプロジェクトが終わり、打ち上げ流れの飲み会だった。場所はおしゃれだけど楽しく飲めるワインバーで、上司たちと別ルートになったせいなのか、金曜の夜という解放感のせいなのか、若い後輩女子達はハイテンション気味で飲んでいて、梨乃は同期の3人と世間話をしていた。
「絶対今年中に捨てていい女になってやる!」
ゆっちゃんと呼ばれている後輩は23歳で、ポッチャリ系の癒し系。たまにミスもあるけれど頑張り屋さんで明るい後輩だ。
何を捨てるのだろう
もしかしたら
彼女も私と同じ物を捨てたいのかもしれない。
仲間がいたかも!あぁドキドキする!
梨乃は全ての意識をゆっちゃんに集中し、彼女だけを見ていると、ゆっちゃんは立ち上がって大きな声でこう言った。
「元カレからもらったプレゼントを全て捨てます!」
そして手元のワインをグイッと飲み干した。
「メルカリコース?」
「その前に見せてー」
盛り上がるテーブルを横目にして、梨乃はガックリ肩を落とす。
違った。
私と同じものじゃなかった。
肩を落として梨乃はゆっちゃんを見つめていると、視線を感じたのか可愛い後輩は立ちあがって梨乃を指差す。
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