完璧美女の欠けてるパーツ
「本当にケガしませんでしたか?まったく、こんな形で出会いたくなかったのに、いや出会えるなんてめっそうもない……それより、あっと……どうすれば。あ、その前に僕のスマホが」
「スマホですか?」
「はい。あれがないと困るんです。全てあれに書き込んでますの……で……」
ラストの『で』は、梨乃の耳には届かなかった。
メガネ男子の彼は梨乃のパンプスをジッと見つめている。正確に言えばしっかり踏みつぶされた横幅からはみ出す自分のスマホを見つめている。
梨乃は足を上げて割れた画面のスマホを拾って、目を合わせずそっと渡した。
「……ありがとうございます」
「ごめんなさい、踏みました」
メガネ男子にさっきまでの勢いがない。
抜け殻になりつつも、スマホを確認して無事動いているのを確認をしてホッとしていた。
よかった壊れてなかったんだ。
梨乃もホッとするけれど、しっかり踏んで割ったのは自分だと自覚して、今度はこっちが軽くパニックになってしまう。
「ごめんなさい。悪気はなかったんです、転びそうになってしまってつい」
「僕が悪いんです。あの本当にケガとかないですか?」
同時に言って顔を見合わせる。
背の高いメガネ男子と梨乃は顔を見合わせ、吹き出して笑った。