完璧美女の欠けてるパーツ

高嶺の梨乃さんは印象が違った。
そう、いい意味で違った。

いつも姿勢よく前を向いてる美しい人なので、ぶつかってコーヒーなんてかけたら、平手打ちされるか、怒られるか、無視されるかと思っていたら、逆に僕の落したスマホを踏みつけて画面を割ってしまったことをかなり気にして、僕が全面的に悪いのに何度も僕に謝っていた。

パニックを起こして変な勇気が出たのだろうか、僕はコーヒーをふたつ買って、梨乃さんを20階の大きな窓のあるロビーに誘って一緒に座ってコーヒーを飲んだ。
冬の青い空が爽やかで白い雲がゆっくり動いている。
首からかけている社員証をお互い見せ合い、自己紹介をした。本当は名前も所属するフロアも知っていたけど、それは言えなかった。

梨乃さんは柔らかく笑う穏やかな女性だった。
ふたりで飲むコンビニコーヒーは今までで一番美味しくて、本当にほのぼのとした雰囲気で無理しない会話ができたのが不思議だった。
高嶺の梨乃さんって、こんな感じなんだ。

もう僕はすでに恋に落ちていた。

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