完璧美女の欠けてるパーツ
延々とそこで話をしていたかったけど、僕を捜しに来た同僚が興奮状態で会話に入ろうとしていたので、梨乃さんはそそくさと席を立って行ってしまった。
僕はその後姿をずっと目で追っていた。
「鈴木!高嶺の梨乃さんと知り合いだった?」
「知り合いってわけでもないんだけど」
偶然による奇跡。というか僕の巻き込み事故。
「やっぱ間近で見るといい女だなぁ。いやー……一度お願いしたい」
下品な発言をする同僚の背中をド突く。
「失礼なこと言うなよ」
「誰だって思うじゃん。でもあんないい女、30階以上のハイクラスとヤリまくってんだろーなー」
「恋人いるのかな」
「いないわけねーじゃん。ほら、先生が呼んでるから行くぞ」
「うん」
返事はしたけど
僕はしばらく動けなかった。
憧れの梨乃さんと話をしてコーヒーを一緒に飲んだ。優しい笑顔がまぶしかった。
スマホは割れてしまったけど、梨乃さんのスカートにコーヒーの染みを作ってしまったけれど。
今日は人生最良の日かもしれない。
もう二度とないだろう。
よし!仕事頑張るか!
もう縁がないと思っていた梨乃さんが、僕を訪ねてやってきたのは次の日の昼のことだった。