完璧美女の欠けてるパーツ
芸能界からスカウトとかなかったのか聞くと、やっぱり街を歩いている時とか、会社の広報の仕事をしているので業界の人と会う機会もあり、よく誘われていたようだ。
「でもね大志さん、モデルとか過酷ですよー。私は好きな物をたくさん食べたいし、週末の夜ふかしも大好きなんです。撮影の為に早く寝るとか食事制限は無理です。身長も165でモデルには足りません」彼女は綺麗だけど自然体だった。鈴の音のような可愛い声で遠慮なく笑う彼女が素敵だった。
将棋が趣味の話をすると女の子には「えっ?」と引かれることがあって、彼女には話さないようにと思ってたけど、聞き上手な梨乃さんの手口にやられてつい話してしまった。
すると梨乃さんは「私もできます。今度一局お願いします」と言うので驚いた。
聞くとお父さんと一緒に遊びたくて、小学生の時に頑張って覚えたそうだ。
「強いですよ私」楽しそうに彼女はそう言った。
こんなに明るくて賢くて思慮深くて優しいのに、世の中の男達は何をやってるんだと、自分を含めて怒りたくなってしまう。
梨乃さんと話をしていると時間が経つのが早い。まだ数回しか会ってないのに、自然に会話ができて最高に楽しく感じてしまう。
気が付けば終電が近くなり
僕は彼女の手を引いて走っていた。
小さくて柔らかな彼女の手。
駅で次の約束を取り付けた時から、もう僕は彼女の目を正面から見れなくなっている。
好きが加速する。
そんなアイドルの歌詞みたいなことがあるなんて、もう32のいい大人が何を言ってるんだろう。
梨乃さんは僕を仲間として見てくれている。
男としてではない。
必ず僕は梨乃さんを幸せにする。
このミッションを必ず成功させる。
ラストは彼女の笑顔で終わりたい。
後悔させないような相手を探そう。