完璧美女の欠けてるパーツ
梨乃さんが恋人と別れた噂が、オフィスビルを駆け巡る。
その噂を聞いて僕は「やった!」と心の中で叫んで、ガッツポーズを出していた。
「大志は知ってたの?仲良いじゃん」
先輩に聞かれて「そこまでの仲ではないので」としれっと答える。
「いやー挑戦してみようかな」
「俺も挑戦してみるかな。あんな綺麗な人と食事とかしてみたい」
職場でもソワソワと男達がそう話している。
挑戦して下さい。誠意を持って大切にすると約束して挑戦して下さい。20階フロアの僕達だけど、職場の仲間は悪いヤツはいないので、挑戦大歓迎です。綺麗だけじゃなくて性格も最高です。
満足そうに仕事をしながら彼らの会話を聞いてると
「でもなぁ絶対プライド高そうだよなー」
「鼻で笑われて終わるかも」
そんな意見も出て来てしまう。
これが現実なのか……。
僕は悩みながらも、この噂がいい方向に行くと信じて、作戦会議に向かった。
梨乃さんとのいつもの作戦会議は乾杯が多かった。
「大志さんのアドバイスのおかげです」
梨乃さんにそう言われて恐縮してしまう。
それから話をしていると、映画の話になり(正確にいえば『べろちゅー』だけど)土曜日に映画に行くことになってしまった。
ふたりで映画を観る。デートか!
自分で突っ込むしかない。
作戦会議の延長として、勉強のために官能映画を観る。
あくまでも作戦会議の一部。
土曜日に映画を観て食事をする。
いや、やっぱりデートだろう!
これじゃいけない
ヤバいヤバい
彼女の魅力にはまってしまう。
深入りしてはいけない。
これ以上深入りすると必ず自分が傷付く。
あくまでも僕はアドバイザーで、彼女の幸せを願って相手を探すミッションなのに、僕は……もう……本当に……
傷付いてもいい
彼女と一緒に過ごしたい。