完璧美女の欠けてるパーツ
時計を確認しながら急いで近くの化粧室に入り、梨乃は大志にLINEで報告するとすぐ返事が届く。明日の夜、いつもの場所で作戦会議をすることになった。久し振りに大志とゆっくり会える嬉しさで喜んだけど、ターゲット確保からのミッション成功となると……もう会えないってことなんだろうなと複雑な気持ちになってしまう。
できれば
笑って終わりたい
嫌われずに終わりたい
感謝して終わりたい。
もう30歳になるんだから、大丈夫。
目を閉じて自分で言い聞かせる梨乃だった。
その夜
本当に高崎から電話が届く。
「よく覚えられましたね」素直に驚きそう言うと
『実は必死でした』と高崎は言う。電話越しの声は低めで渋い感じがする。
「今日は本当にごちそうさまでした」
『こちらこそ、楽しい時間をありがとうございます』
そんな普通の会話の切り口から、20分ほど話をした。
互いの仕事の内容から始まり、趣味の話とか旅行の話とか、イケメンハイスペックの話題は尽きない。さすが一流の弁護士は話上手で聞き上手。さりげなく自分のハイスペックアピールもあり、普通の女子ならうっとり気分だろう。