完璧美女の欠けてるパーツ
今に至る
梨乃は生まれた時から可愛い顔をしていた。
可愛い女の子に恵まれた一家は、幸せを絵に描いたような素敵な家庭とはほど遠かった。
梨乃の父親は顔だけは誰にも負けないイケメンだけど女にだらしなく、夫婦は梨乃が生後半年で離婚してしまった。
梨乃の母は25歳でシングルマザーになったけど、一生懸命働いて梨乃に愛情を注いでくれた。
梨乃はスクスクと美しく育つ。
その様子を見て母はヤバいと感じてしまう。
顔がいいと良くも悪くも目立つ。その気はなくても、男絡みで女子の反感を買って嫌われる。
母は梨乃に『なるべく目立たず、男友達より女友達を大切にしなさい』と指示をして、梨乃はそれを守った。
そして梨乃が10歳の誕生日を迎えた冬。
梨乃の母親は5つ下の男性と再婚した。デキ婚だった。夏には妹が生まれた。
とても真面目で優しい男性で、梨乃も新しい父親に喜んだ。
なんせ生後半年で父親を失ったので、友達が父親と買い物に行ったとか、ケーキを食べに行ったとか聞くと胸をチクリと何かで刺されたような痛みを感じていた。
どんなに綺麗な女の子でもまだ10歳。
子供である。
妹が生まれてからもよく面倒を見て、良きお姉ちゃんになった。
幸せな四人家族なんだけど、妹が成長するにつれ、梨乃は新しい父親との距離に悲しさも覚えていた。
新しい父親は妹を可愛がる。
それはいい。梨乃も妹が可愛い。
特に父親に無視されるとか、いじめられているわけではない。そんな事があれば母親が黙ってないだろう。
なんだろう……小さな違和感の正体を梨乃は考える。
新しい父親は梨乃とのツーショット&スキンシップが苦手だった。