完璧美女の欠けてるパーツ
「見合い話もあるから」
「やっぱりそうか、代議士の娘って噂だけど」
「まあね」
「遊ぶ相手は美女で結婚は代議士の娘かよ。うらやましー」
「美人の愛人枠もいいかな」
そう話をしながら笑っているふたりを見て、大志の怒りは爆発する。
許さない!
梨乃さんを愛人枠にするなんて、絶対許さない!
あんな可愛い人をもの足りないなんて、どこに目を付けてるんだ!!
「ふざけんな!」
頭にカーッと血が上り、大志はそのまま飛び出し、梨乃の相手であるハイスペック弁護士に向け手を上げる。
血走った目をして大志は、男らしくこぶしを上げて男の頬に一発喰らわせ、男が痛みと恐怖で震え上がり、逃げようとした隙を狙って今度は思いきり腹を蹴り、床に沈めてしまう予定が……。
逆に振り上げた手を強く捕まれ逆手にされ、素早い動きで身体を封じ込まれてしまった。そして殴る蹴るでボコボコにされて床に沈む。
痛みに耐えながら大志は考える。そういえば梨乃さんに渡したこいつのファイルには、空手が師範代とかって書いてあったかもしれない。マリンスポーツとゴルフが趣味で会員制ジムで身体を鍛えている相手に、インドアな自分が勝つわけない……と。
「鈴木先生っ!!!」
後輩の声が床越しに聞こえる。
梨乃さん……こいつダメだよ。
こんな男と思わなかった。調べが浅くてごめんなさい。
こいつはダメ。強いけどダメ。
でも
もっと弱くてダメなのは僕だけどね。
あぁ
本当だ乙女な自分が悔しい
ズキズキする身体を後輩に思いきり揺さぶられ、大志は心も身体も痛みで半泣きだった。