甘味好き御曹司とお見合い結婚!?
「夏乃、この三枚はあなたのサインが必要なの。お願いしていいかしら?」
見れば、入院費の保証人と手術の家族同意書などで私もなんとか頭を切り替えて内容をよく読んでサインした。
「はい、書類は大丈夫です。これから看護師に代わりまして、手術準備や内容についてお話します」
「看護師の間宮と申します。今回手術にあたってご準備頂いたものはそのままお使いいただけます。また、今日の十四時より手術開始になります。手術は一時間ほどで完了します。その後お休みいただいて、病室には術後二時間でお戻りいただけるかと思います」
「今日はこのまま点滴で栄養を取っていただいて、明日の朝食に重湯からスタートします。術後なので徐々に通常食に切り替えますので、ご了承ください」
「ご家族は手術中は待合でお待ちいただけます。ただ、術後は経過もこまめに見させていただきますので、面会は術後お部屋に戻るときに顔を見るだけになります。ご承知おきください」
そうして、サクサクと説明してくれた看護師さんは私より少し上くらいに見える看護師さんだった。
「では、これから手術の準備に入りますのでご家族は手術室前の待合でお待ちください」
ニコッと笑ってくれた看護師さんは、頼もく見えた。
「祖母をよろしくお願いします」
そうして、初めて家族の手術の立ち会いを迎える。
一人になると、本当に大丈夫なんだろうかと不安になる。
それでも、このままでは祖母は私を置いていってしまう。
いずれそうなるとしても、今すぐなんて私が耐えられそうにない……。
だから、私がなにか言うより先に手術を決断してくれた祖母には頭が上がらないのだった。
そうして、手術の準備を終えた祖母がストレッチャーで手術室に運ばれてきた。
顔を見れば祖母はすぐに優しく笑う。
「大丈夫、まだあんたを置いてけないからちょっと心臓治してもらってくるからね。心配ないわよ」
そう言って私の差し出した手を握って話し、手が離れると手術室へと入っていった。