甘味好き御曹司とお見合い結婚!?

 手術は予定より早く順調に進んだらしく、一時間半で手術室から祖母が戻ってくるまで私はじっと待合室で待ったのだった。
 今までで、一番気持ちも重く長い待ち時間となった。

 手術を終えた祖母はよく眠っており、顔色もよく穏やかだった。

 「お疲れ様、お祖母ちゃん。今日はゆっくりして、また明日来るからね」

 そう声をかけて、病室に戻った祖母を見送って私は今日はすることも無くなったのでひとまず理紗さんとラズさんに今日の報告に職場に寄ってから帰るべく病院を後にしたのだった。

 家に帰る途中にあるボナ・ペティに顔を出すと、理紗さんがすぐに来てくれた。

 「夏乃ちゃん、そのえさんの具合はどう?」

 理紗さんは実は、お祖母ちゃんの華道教室の生徒さんでもあるので二人はとっても仲がいい。

 「理紗さん。今日少し前に手術が無事に済みました。これで大丈夫と医師にも言われたので、来週中には退院しますよ」

 そんな私の言葉に理紗さんはその大きな目をさらに見開いて、ガッと私の肩を掴むと言った。

 「そのえさん手術するほど容態が悪かったの?!」

 驚き、おろおろとしだす理紗さんに医師からされた説明をすると納得しつつも言った。

 「手術前に連絡してくれたらよかったのに。一人で待つの心細かったでしょう? 夏乃ちゃんはしっかり者だけれど、そういう時は連絡くらい寄こしなさい」

 そんな理紗さんとのやり取りを、ホールのスタッフも覗いてはすごく頷いて同意を示しつつ料理をもってホールに戻っていった。

 「理紗の言う通りだよ、夏乃。仕事仲間でもあるけれど、僕と理紗にとって夏乃はファミリーなんだよ? 僕らに頼って良いんだ」

 そうバチッとウィンク付きでラズさんが言うから、私はここにきてやっと肩の力が抜けて笑うことができた。

 「ラズさん、理紗さんありがとう。術後の様子を見に行くので明日もお休みになりますが、明後日からは出勤するのでよろしくお願いします」

 ペコッと頭を下げた私に、理紗さんとラズさんは顔を見合わせてクスッと苦笑いをするとこう言った。

 「夏乃のケーキのファンが君に会いたがっているし、今日もお客さんからはデザートは日替わりがないのね? って問い合わせ多かったんだ。明後日、復帰楽しみにしているからね」

 「そのえさんにも、気にしなくっていいからゆっくり休んでねって伝えてね」

 「はい。ありがとうございます」

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