甘味好き御曹司とお見合い結婚!?
「確かに、弥生さんとは数回会ってるね。家にご招待して一緒に夕飯も食べたりしたし。その時に息子さんの話も聞いたような……」
そう返した私に、祖母はニコッと返す。
「そう、その弥生さんにね昨日連絡したの。入院して手術も無事に済んだけれど、今後を考えたら夏乃が心配だって。そうしたら、弥生ちゃんの次男もまだ結婚の気配もないって。だから、二人を会わせてみましょうって話になったから。今度の週末、ボナ・ペティに来てくれるからお話してみて頂戴ね」
ウソでしょう?! なんで今週末? しかも職場に来るなんて逃げられない……。
「弥生さんが話したら、次男さんボナ・ペティによく行ってるんですって。だから夏乃の話をしたら楽しみにしていますって言ってたから、まずはちょっとお話してきたらいいわ。あなたいきなり料亭で顔合わせとかになっても話も出来ないでしょうから、仕事中にちょっと顔見て話すくらいがいいと思ってそうしてもらったのよ」
サラッと言われた言葉になにも反論出来なかった。
中高と女子だらけで過ごした私は製菓の専門学校で久しぶりに異性と一緒になるも、そこは専門学校。みんな技術習得に必死で恋愛になんて発展する余地も無かった。
そのままボナ・ペティで働き始めて七年。
家と、お店と、新メニュー開発のための食べ歩きばかりしていた私に出会いなんてなかった……。
そう、結婚したいと思っても、恋愛してこなかったし、出会いもなかった。
経験値ゼロの私には、祖母にひ孫を見せるための予定も皆無だったのだ。
「いいお話だから、今週末楽しみに頑張りなさい」
祖母は朗らかに言い放った。こういう時に祖母の意見が覆らないことは経験上理解している私はがっくりと肩を落としつつ頷いたのだった。
避けられないならば致し方ない。
それに、もしかしたらいい出会いのきっかけになるかもしれない。
だから、私は前向きにとらえることにしたのだった。