甘味好き御曹司とお見合い結婚!?
「お疲れ様、和美。海外出張の同行だったんでしょ? 忙しかったのね。これは、今回私とラズさんからのサービスよ」
これを準備した時にラズさんからは了承を得ていた。和美は最低でも月一で顔を出す常連で、それは私がここに就職してから七年ずっとだ。
もはや立派な古株の常連さんである和美の様子を見て、ラズさんに相談してこのデザート盛りを準備した。
ここでの和美は高峰さん同様に甘いもの好きとして知られているので、ラズさんは疲れた様子の和美を見て心配もしたらしく、快くサービスの許可をくれた。
頼む前から届いたお皿に目線を向けて、和美は嬉しそうな顔をする。
「そう、これよ! 夏乃のデザートに飢えてたの!」
お皿に盛ったのはクリームチーズタルト、夏ミカンのゼリー、ティラミスの三種類。
和美は柑橘系とチーズ系のデザートが好物だからこの組み合わせになった。
和美はデザート盛りにさっそく手を伸ばして、一口食べるとぎゅっと目をつぶって嬉しそうに食べている。
甘味好きの和美がこんなに甘いもので反応が大きいのは珍しい。
よほど甘いものを食べていなかったと見える。
私はディナータイムの終盤だったのですでに明日の仕込みも済んでいる。
服もコックコートから通勤用のカジュアルな服に着替えて出てきたので、和美に用意したのと同じカフェモカを自分用にもきちんとお金を払って入れて持ってきた。
「今回の出張先が香港、マカオだったの。いいところよ? でもね、私の欲しい甘味は手に入らなかったの。一週間も!」
日々甘いものを欲している和美が、一週間も甘いものを食べられなかったなんて、それはかなりの苦行だったに違いない。
「それでね、明日は一週間休みなしで出張同行したから、お休みもらえたの! あの、夏乃お勧めのパンケーキのお店に一緒に行こうよ!」
どうやら、先週私の休みの日を教えていたのを覚えていて、誘いを掛けに来つつ甘いもの補給に来たようだった。
そんな和美の様子に、ほかのお客さんにサーブに来ていた理紗さんはクスッと笑いつつ、サラッと私にとっての爆弾を落としていった。
「それなら、お出かけしつつ木曜日の夏乃ちゃんのデート服も見繕ってきてあげてね」
そんな理紗さんの言葉に和美はクワッと目を見開くと、私にすごい勢いで問いかける。
「ちょっとどういうこと!? 私、夏乃に彼氏できたなんて聞いてないよ!?」
「彼氏じゃなくって、お祖母ちゃんの知り合いの息子さんを紹介されて、ちょっと一緒に食事に行くだけだよ」