甘味好き御曹司とお見合い結婚!?
「高峰くんってば、こんな雰囲気いいお店を知ってて教えないなんて薄情よね!」
「そう言うなよ、貴子。潤也もここは知られたくなくってコッソリ通ってたんだから仕方なかろう?」
「そうは言っても水臭いじゃない! 私たちの中で隠し事なんてさ!」
そんな女性と男性の声がして、高峰さんの声は聞こえてこない。
そんなことに気づき、明日の仕込みに集中していたはずなのに周囲の音が入るくらいにはどうやら集中力は切れてしまったみたいだ。
私は、ソロっと顔を上げるとバチッと高峰さんと目が合う。
すると、彼は私と目が合うと嬉しそうに微笑んだ。
そんな高峰さんに、向かいに座った男女は気づくと驚いた顔をして詰め寄り出す。
「ちょ、お前そんな顔で笑えるの!? え、俺明日もう生きてないの?」
などと取り乱す男の人に、女の人も驚きを隠さずに言う。
「十年以上の付き合いだけど、こんな微笑み初めて見るわ! え?明日は槍でも降ってくるの!?」
そんなびっくりするような会話ののち、高峰さんはにこやかに言った。 その目は冴ざえとしている。
「お前ら、あんまりな事ばかり言ってると僻地に飛ばすぞ?」
「そんなの職権乱用でしょ? 私がいないとスケジュール管理大変なくせに!」
「そうそう、俺らのサポート無しじゃ大変だろうが」
そんな男性と女性の言葉に、高峰さんはニッコリ微笑むと言った。
「お前ら、俺の結婚潰す気ならそれなりに本気で考えるぞ……」
高峰さんの本気を察知したのか、お二人は少し黙ったのだった。
私は、ここで聞き耳立ててるのもなんだか気持ち的にはばかられて早めに明日の仕込みを済ませるとそそくさと、スタッフルームに向かって裏口からコッソリ帰ることに決めた。
私は仕込みを済ませて片付けも終えると、ラズさんにコソッと挨拶をして帰宅するためにいつも以上の速さで行動した。