煙草未満。―唇を塞ぎたくて―



「せんせー!」

ベランダ。教師としてダメじゃないのか。煙草を咥え、グラウンドを眺めている。



「うるさ」

長い前髪が、眼鏡の銀縁フレームにちらちらとあたっていた。



「勝手に部室をつかうのが悪い」

「顧問だよ」

「部活やってなかったらダメでしょ」

演劇部。今日は部活動がない日だ。



「煙草に呼ばれたから来たんだ。俺のせいじゃない」

淡々と述べる、温度のない声。



斜め後ろからは、横顔ともなんとも言えない微妙な顔だけが、目に入る。心に入るかどうかは、別問題。

「……」

返す言葉もなくなって、じっとみつめた。

視線に気がついた先生は、眉根を寄せて「なんだよ」と、不機嫌をさらけ出した。


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