煙草未満。―唇を塞ぎたくて―
「ハロウィンだね」
「……あ?」
「ハロウィン」
行事の名前を言って、濁点がつきそうなくらいの声をもらされるなんて。
怒りの演技ができない、優しい部員たちにみせてあげたい。
「あぁ、そんなものもあったっけ」
「あるんだよ」
コスプレを、彼がしたら?
顔だけだったら、警察官が似合いそうだ。
性格は……オオカミ?
「俺、ハロウィン嫌いなんだよな」
ふと、息が止まる。
あまりにもしんみりとしていて、止めることが必然のように思えた。
「ふーん」
だから?、というような声が出てしまった。
「お前なぁ。普通は、神妙とした声でわけを聞くんだよ」
ムードを壊すな。そう言って彼はそっぽを向く。
一瞬だけみた、こっち。煙草が唇からさった瞬間。