浮気男のシンデレラ
俺はペタンと座り込み木の下で夜を明かした。
朝ぺろぺろ、リズミカルな舌さばき。
ミョロミョロした舌が俺の歯を舐める。
薄く目が覚めかける。
重たい瞼が少しひらくと・・・

《《《やめなさーい。》》》
プクプクメガネのおばちゃんが

《《《ルルちゃん、酔っぱらいは
汚いのよ‼お腹壊したら
大変よ!》》》

と犬を叱っていた。
「え、俺?汚い?」

又ウトウトしてしまった。
次はポリスマンに起された。

少しゾワゾワして寒気が襲って来た。
そこにはトマトの姿は無く、
当然ちゃあ当然だがトマトにも置き
去りにされたらしい。

「あートマトの奴許せねー」
スッカリ酔いの覚めた俺はタクシー
に乗りマンションへと帰りついた。



あー、酒と、ピーマン、トマト
スペシャルな組み合わせ‼
38度の高熱を出し寝込んでしまった。

それから4週間
悪友の合コン誘いは毎週毎週、言って
くるが、。風邪、熱、腹痛
で断り続けていた。

会社の真面目秘書山岡を業務命令で、
引っ張り出しカフェに通った。

あの日とおなじ、ドアの前に立っウサ
ギ、ガランカラーンと、ドアベルをならす。

毎回彼女が出迎えてくれると心が高鳴
る、そして毎回ガックリとする。

昼居ないならと朝、昼、夜
秘書、弁護士、業者、取引先、独身
人を変えて毎回通った。

通い初めて1ヶ月彼女の姿は、
おがめない。

山岡(秘書)を連れ今日もやって来た。

気が付くと兎とは会話が出来る程
仲良くなった。


「今日も来たのかい!今日の
日替わり定食は、
なんだろうね。」

「さあ、日替わり定食より
彼女に合わせてくれよ。」

そう挨拶して中に入る癖がついた。
遂にイカレて来たかも知れない。秘書
の山岡の顔も引きつっている。

今日の日替わりはハンバーグ、コンソ
メ スープが付いて焼きたてパン、
ハンバーグがデカくて美味しい。

最後の珈琲を頼んだ時、俺は
意を決してこう言った。

「カプチーノとオーナーを‼」

秘書の山岡も

「ダージリンティーとオーナーを‼」

一瞬、エッ‼と引いたスタッフは

「お、お待ちください。」

厨房から何人かのスタッフが怪しい
視線を送ってきたがスッとしてキリッ
とした、美人が出てきた。


白いコック服を着て、髪をネットに
いれ衛生上文句無しの格好であらわれた。

お待たせしました。
珈琲と紅茶をテーブルに置き

「オーナーの谷口です。毎回ご利用
ありがとうございます。」


きちんとした態度に真面目秘書山岡も
ピッと姿勢をただし深々と頭を下げる。

「あ、どうも」
俺も慌てて右に習い。

「ご要件は何でしょう。」


姿勢をただし、

「あの?此方のスタッフさんですが
1ヶ月前の土曜日、合コンの
デザート担当されていた人で

可愛らしいくて、愛らしくて
頬っぺも目も可愛くて、全部
可愛らしい、凄ーく、可愛い彼女は

いますよね。」

ン?
いまいち意味が分からない。
オーナーの回りにはハテナマーク

「スタッフは皆んな可愛らしい
ですけど・・・。」
彼女は驚いた様子で目をまるくした。


「誰の事ですか?」

オーナーは頭の中で首を傾け思い当たる人物を探しているようだった。

俺は困った顔をしていたら真面目秘書
山岡がメガネの端をキリリと持ち上げ


「ここ何日か、副社長は彼女に会いに
きております。

勿論御料理は最高に美味しく、満足
行く物でファンになりました。

しかし通えども、副社長のお目当ての、彼女にはお会い出来ておりません。

「お辞めに、なられたのですか?」


「え?会えて無い?
シフトは平等なんだけどなー!」

うーん?あっ💡
「陽和ちゃん・・・かな?」

慶一道はパアアアッと顔を綻ばせ

「名前迄、可愛らしいーっ」
ツイ叫んでしまった。

「あ、でも個人情報なので・・・
彼女は元スタッフで、今は就職して
ますよ。時々手伝って貰ってます。

流石に就職先は、本人確認しないと
言えませんけど。」

ん、あ‼貴方?
「ラブホ街で車追いかけた人?
凄い酔ってたでしょう。」

・∵ブハッ>д<、;'.・ ゲホゴホ


「ふ、副社長?そうなの
ですか?」

真面目秘書は慌てて吹き出す俺に、
おしぼりを手渡した。

「あ﹏んなに綺麗な女性と、
ピッタンコ
くつついて熱々だったじゃない。
しかもラブホ街だし。
陽和ちゃん引いてたし
無理でしょ
う。」

副社長はパパパと席を立ち
ガバッ‼
土下座した。
真面目秘書もガバッと土下座した。

「彼女に一目惚れして、探していまし
た、お願い致します。

ラブホ街は未遂です。
木の下でねていました。

犬と警察官が保証してくれます。
酒の勢いで、本気な訳ありま
せん。

木の下で夜をあかしましたっ‼」


「まてまてまて‼犬?ってなに?
立つて、話が出来ないでしょう。」

2人はノソノソ起き上がり、ウルウル
した目で、彩乃を見た。
そして名刺を差出した。

彩乃は「う〜ん、う〜ん、」と名刺を
見ながらうなり出した。

慶一道はオーキッドの副社長と聞けば
何処の店も歓迎してくれた。

しかしここのオーナーは唸り出した。

〃 なんで?〃

オーキッドの副社長と聞いて、彩乃の
脳裏に浮かんだものは、・・・

つい、三ヶ月前の事。








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