1日遅れの、おまけ。
そして、放課後。
あたしが高岡と話せる可能性がある唯一の時間がやってきた。
あたしが所属する手芸部は開店休業とも言えるくらい、普段はまったく人が集まらない。
とは言っても適当に集まった部員というわけではなく、部員はみんなかなりの腕前で、必須のクラブ活動時間以外は自前のミシンがある家で作業しているのだ。
あたしはというと、手縫いや編み物が好きで身一つで活動できるし、手芸部のこの部屋が心地よくて、毎日のようにここに来ている。
そして、ここにたまにやってくるのが、部活の休憩時間に部活仲間の輪から抜け出してきた高岡だ。
今日は来てくれるかな……と思ったとき、部屋の扉が勢いよく開いた。
「美波! 腹へったから何か恵んで!」
「またぁ? あたし、高岡のおやつ係じゃないんだけど!」
まぁ、心地いいっていうのはただの都合のいい言い訳で、高岡が来てくれることを期待して、毎日ここに来ているというのが正しいんだけれど。
ちなみに、一見名前のように思える“美波”はあたしの名字であり、高岡の「美波」という呼び方には特に意味はない。
他の子たちとまったく同じ扱いだ。
「そんなこと言いながら、用意してくれてるくせに」
うん、その通り。高岡が来るのを今か今かと待ってたよ。
にやにや笑う高岡に「仕方ないなぁ」と言いながら、サブバッグからお菓子の箱を取り出した。