愛というもの~哀しみの中で~
「泣いてくれるお母さんがいるなんて素敵じゃない。」

「母親に泣かれるのが一番辛い…自業自得だけど。だからこそ早く一人前になって茉莉と一緒に帰りたい。」

私と一緒にって言ってくれたことが嬉しくてまた涙が出た。

「私の岩崎ってね、母方のおばあちゃんの旧姓なんだって。高校に入る時に戸籍を見たんだけど、一応母親の欄には名前があって大下透子って書いてあったの。」

「茉莉はお母さんに会った記憶ないの?」

「うん。生んですぐに預けられて一度も会いに来たことはないみたい。父親の欄には名前がなくて誰かもわからない。」

ずっと大吾が抱きしめてくれてて背中にぬくもりを感じられるから、今まであまり話すことも考えることすらしてこなかったことが口から出ていた。

「俺、茉莉の家族になる。そうしたらさ、俺の親も兄貴も茉莉の家族になって一緒に帰る場所もできるだろ?俺頑張るから。」

「あっ、だから指輪なんだ。これって指にはめられるの?」

「ひぇ?ちがっ、違うから!これはクリスマスプレゼントで、多分小指に付けるってやつ。昌が仕事中は付けれないからチェーンに通したら?って言うから…」

大吾が背中に顔を押し当てて話すからこそばくて身をよじった。
なんとか大吾と向かい合わせに座ると真っ赤な顔してた。
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