愛というもの~哀しみの中で~
「茉莉ちゃん、私がいるからね。沢山泣いていいし、沢山おしゃべりしよう。」

由実ちゃんは私を力いっぱい抱きしめてくれた。
それから手を引かれるまま由実ちゃんの家に向かった。

「そういえば、ケータイ置いてきてるんだった。」

「ケータイは明日まで放っておこう。今はいいの。今日だけ私に付き合ってよ。茉莉ちゃんとはもっと仲良くなりたい。」

由実ちゃんは私の手をしっかりと握りなおすと足早に歩いた。
今までどこに住んでるとかしらなかったけど、由実ちゃんの家はコンビニから歩いて10分ほどのマンションだった。
私のアパートとは違って新しく、エレベーターもついていた。
由実ちゃんの部屋は5階にあり、玄関に入るとすごくいい匂いがした。

「うちとはまるで違う。私の家はボロくて…。こんなにいい匂いもしないし、可愛くもない。愛想尽かされても仕方がないよね。色気も何もないもの。こんな面倒くさい私なんて…。」

「そんなことないよ。私は親のすねをかじって生きてるだけの子供だもの。茉莉ちゃんはすごく立派だよ。すべてを知ってるわけじゃないけど美代さんから少し聞いちゃった。勝手にごめんね。」

「ううん、いいの。別に聞かれて困ることなんてないし。事実だし、隠してたわけでもないから。」

由実ちゃんの部屋は1Kになっていて、玄関から入るとすぐにキッチンがあり、その向かいに
ドアが2つ、奥に1つ、その奥のドアを入ると私の家より広めの部屋があった。
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