愛というもの~哀しみの中で~
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私は驚いて大吾を凝視していたら、違う方から声が聞こえた。

「おいっ!お前、いい加減にしろよっ!」

びっくりして声の方を見ると両手に缶コーヒーを持ったまま手を挙げて怒っている昌くんだった。

「近所迷惑!早く帰って。今日はなんて言われても茉莉ちゃんは渡しません。行こう。」

由実ちゃんは昌くんに睨むように言うと私の腕を引っ張って中に入ろうとする。

「茉莉ぃ~、ごめん、まじで…」

大吾の弱弱しい声が聞こえて、大吾を見るとこちらを見上げていた。
暗くてよく見えなかったけど泣いていたのかもしれない。

「由実ちゃん、大吾泣いてるかも。」

中に無理やり引っ張って行かれながら振り返るけどすぐに大吾は見えなくなった。
私は温かい部屋に入るとその場に座り込んだ。胸がぞわぞわしてどうしていいのかわからなかった。

「ごめんね、茉莉ちゃんにとっては大吾くんのところに帰るのが一番いいのかもしれないけど今日一日は反省するべきだと思うから。昨日の夜茉莉ちゃんは一人で泣いていたんだから。」

「でも、でも、どうしよう…。」

「大丈夫だよ。大吾くんには昌くんがついてるし。実はね、茉莉ちゃんから話を聞いたときにすぐに昌くんにどうなってるんだって、怒ってメールしてたの。その時今日はうちに連れて帰るって言ってしまったから、仕事終わってすぐに二人で来てたんだよ、ちょうど茉莉ちゃんがお風呂に入ってるときに。前に送ってもらって家はばれてたから。」
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