愛というもの～哀しみの中で～
由実ちゃんの言葉を聞きながら大吾は声を殺して泣いていた。その涙が私の服を濡らし、私の心に流れ込んできて冷え切っていた心を温めてくれているようだった。
私は大吾の頭を何度もなでた。そうすることで自分の心も癒えていくようだった。

「もうっ、まるで母親にすがりつく子供じゃない。みっともないからもう顔を上げなさいよ。」

怒っていた由実ちゃんが少し落ち着いたのかため息交じりにそういうと、昌くんが隣で笑っていた。
大吾の腕の力が少しづつ抜けていき、ようやく顔を上げた。
目は腫れており、きっと昨日はずっと泣いていたのかもしれない。その顔をみると愛おしくてたまらなかった。

「フヘヘッ、大吾の顔。」

私は笑ってまた流れてきていた涙を指で拭った。

「茉莉ぃ～、ごめん、本当にごめん。」

そういってまた次から次へと涙を流し始めた。
それを見て由実ちゃんと昌くんは向かいの席で笑っていた。
場の空気が落ち着いたと思った店員さんが注文を聞きに来た。本来ならボタンを押して呼ばないとこないのに何も注文せずに長居してしまっていたから来たのだろう。

「私、やっぱりいつものチーズハンバーグにする。茉莉ちゃんもハンバーグでいいよね？」

「えっ、どうしよう…」

「大吾くん沢山食べれる人でしょ？茉莉ちゃん全部食べれないからって迷ってたの。残したら食べれるよね？」

由実ちゃんからいきなり話しかけられた大吾は戸惑った感じで頷いていた。
< 132 / 350 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop