愛というもの~哀しみの中で~
少し驚いた。よく考えてみれば就職決まったって言ってたし遠くに行ってしまう可能性だってあるのに…ずっとこのまますぐ会える距離にいると思ってた。

「そんな顔しないで。引っ越すって言ったってどちらかというと茉莉ちゃんの家の方にだよ。ここから茉莉ちゃんの家を通り越して、もう一つ駅を行ったところ。電車でいえばお隣の駅だし。」

私があからさまに淋しい顔をしたから由実ちゃんは笑って教えてくれた。

「よかった。もう会えなくなるのかと思った。」

「ハハハッ、私の片思いじゃなくて良かった。私ってグイグイいくタイプだから茉莉ちゃん迷惑してるんじゃないかって心配してたの。」

「そんなこと、私由実ちゃんのこと大好きなのに。この前も私のこと助けてくれたし、でも私って今まで友達もいなかったからどうしていいかわからないの。由実ちゃんの助けになりたいのに…」

「今まさに私に優しくしてくれてるじゃない。私は茉莉ちゃんだから恥を承知でこんな話してるし、聞いてくれて共感してもらえるだけで救われることってあるんだよ。抱きしめてくれるし。」

そんなことで良かったんだ。
私って今まで話を聞いてもらえる相手もいなかったから自分から話すこともなかったし。

「役に立ててるなら安心した。」

「ありがとう、茉莉ちゃん。これからもどんどん相談するから、大吾くんばっかりみてないで私のことも見てね。」

冗談まじりにそんなこというから恥ずかしくて顔が熱くなる。
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