愛というもの~哀しみの中で~
私はなんて言っていいかわからずに大吾の顔を見つめた。
動けなかったけど頭はパニックで、いきなり涙が溢れ出してきた。

「茉莉?えっ?」

大吾は慌てて私を抱きしめた。

「なんで泣くの?赤ちゃん出来てなかった?」

私は抱きしめられたまま首を横に振る。

「まだ、まだ検査してなくて…どうしよう…」

「やり方がわからない?中に説明書ないのかな?」

大吾は冷静で、私を抱きしめたまま箱を開け始めた。
そのまま中に入っていた説明書を熟読し始めた。

「茉莉、検査簡単そうだしやってみる?っていうか茉莉が検査するために買ったんだよな?」

私の胸の中には不安しかなくて力いっぱい大吾にしがみついた。

「茉莉?怖いの?」

「怖い…。私、大吾と離れたくない。」

「ん?赤ちゃんいたらそれこそ離れないだろ?もし赤ちゃんいなくてもずっと一緒だよ。」

大吾は私の頭と背中を撫でてくれていた。
私は大吾の『ずっと一緒だよ。』の言葉に安心してさらに涙が止まらなかった。
家族に縁のない私はこれがきっかけで大吾を失ってしまう想像しかできなかったから。

「落ち着いた?由実ちゃんに何か言われた?喧嘩したりしたのか?」

私が落ち着いたのを見計らって心配そうに聞いてくる。
私は首を横に振るとようやく頭を上げて大吾の顔を見た。

「由実ちゃんに赤ちゃんいるかもって言われたの。私そんなこと少しも思ってなくて…。昔由実ちゃんの友達が妊娠がわかったら彼氏と揉めて別れたって話を聞いたことがあるの。大吾も離れていくんじゃないかって不安で…。」
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